歯並びがきれいな人は表情が明るくなるだけではなく、歯のケアがしやすくなり、虫歯や歯周病のリスクを下げてくれます。
一方で出っ歯や受け口など、歯並びや噛み合わせが悪いと口元の形がよくないために、人前で話をしたり笑ったりすることを嫌がるようになる方もいらっしゃいます。
引きこもりの原因になることも少なくありません。
また歯並びが悪いと歯磨きをしても歯垢をしっかり落とせなくなり、虫歯や歯周病になりやすくなったり、口臭の原因になることもあります。
歯科矯正は、矯正装置を使って歯と顎の骨の少しづつ動かし、顎の骨の成長をコントロールしながら、歯並びと噛み合わせを整えていく治療です。
歯並びの悪さがもたらす弊害
歯並びが悪いと日常生活で様々なデメリットがあります。
- 歯垢が溜まりやすい
- 虫歯や歯周病になりやすい
- 発音がしにくい
- 食べ物が咀嚼しにくい
- 顎の関節に負担がかかりやすい
- 子供の顎が正しく成長しにくいことがある
- 口元や笑顔にコンプレックスを感じる
といったことがあげられます。
矯正はいつから始めるべきか
矯正治療のベストなタイミングは、乳歯が抜けて永久歯に生え変わる小学生高学年から中学生の頃です。
しかし、場合によっては乳歯の時期から治療を開始したほうがよい場合もありますし、大人になってからのほうが良い場合もあります。
治療期間は歯並びの状態によりますが、一般的には月に1~2回の通院で、約2~3年です。
しかし個人差が大きく、治療時期や期間は、不正咬合の程度や原因、口内環境などによって、大きく異なります。
矯正はできるだけ早い時期に診察を受け、専門知識を持つ歯科医師と相談して時期や治療の方針、計画を確認することが大切です。
矯正治療の流れ
矯正治療はどのような手順で進められるのか、一般的な例をみていきましょう。
- 1初診・相談
- 矯正に関する悩みや不安点などを伺い、矯正治療について詳しく説明します。 不明な点はお気軽にご質問ください。 そのうえで、今の歯並びや噛み合わせの状態を診察し、治療の必要性や方向性を判断します。 治療方法や治療期間、費用などについても説明いたします。
- 2分析・診断
- 正確な矯正治療計画を立てるには、歯並びとかみ合わせについて正確に把握する必要があります。 正面や真横からレントゲン写真を撮り、歯の位置と顎の骨格を調べます。 また、口や顔の写真も撮り、歯並びやかみ合わせの模型を作製します。 この分析と診断を基に、最適な治療方法を考え、治療計画を作成します。
- 3矯正中のブラッシング指導
- 矯正治療中は、歯に毎日矯正装置を装着する必要があります。 そのため矯正装置周辺には歯垢や歯石がたまりがちです。 矯正治療で虫歯や歯周病になると大変ですので、正しいホームケアで口の中を清潔に保つことが大切です。 正しい歯みがきについて、矯正治療期間中を通じて指導していきます。
- 4矯正装置装着
- 治療方針に基づいて、矯正装置を作成して装着します。 最初は矯正装置に不快感や痛みがありますが、2~3日ぐらいで慣れます。 数日経っても痛みが続く場合は、すぐに連絡をください。
- 5矯正装置の微調整
- 2~4週間程度に一度通院していただき、矯正装置を調整します。 歯は矯正装置によってゆっくり少しずつ動いていきます。 歯並びや噛み合わせの変化を調整しながら、無理のないように装置を変えて、治療を進めます。
- 6保定
- 歯並びがきれいになり、矯正装置を外せる状態になったら、取り外し可能な矯正装置であごや歯並びを安定させていきます。 保定期間は3~6カ月ごとに通院していただきます。 同時に歯のクリーニングも行います。
小児矯正
小児矯正は成長期に行う歯科矯正で、永久歯が生え揃う前後のタイミングで始めます。
成長期に矯正治療を行うことで、成長中の固定されていない顎の骨も動かすことができるので効率よく歯を動かすことができます。
一生涯、正しい歯並びや噛み合わせにする治療です。
歯並びは虫歯や歯周病の予防、全身の発育・健康、発音、見た目にも影響します。
歯並びをきれいにすることは、見た目の美しさだけではなく、歯や体全体の健康のためにも重要です。
小児矯正は、一生涯の口と全身の健康の実現のために大きな意味があるのです。
お子さまの歯並びや噛み合わせを改善するためには診断は少しでも早いほうがいいです。
不安や気になることがあれば、ぜひお気軽に当院へご相談ください。
子供のうちに矯正治療がベストな理由
子供の矯正治療は、顎の成長をコントロールし、きれいな歯並びになるよう歯の土台づくりからすることができます。
歯並びを整えるための基礎工事ができると考えていただければいいでしょう。
矯正治療では見た目がきれいになるだけでなく、意外な健康効果が期待できます。
- 虫歯、歯周病の予防
- 歯並びが悪いと、歯の隙間などに食べ物や歯垢がたまりやすくなり、虫歯や歯周病の原因になります。 歯並びはきれいだと歯磨きがしやすくなり、歯垢も落としやすくなります。
- 噛む力が上がる
- 歯並びを整えるとしっかり食べ物を噛むことができ、咀嚼機能が向上します。 その結果、食事をおいしく食べられるようになり、さらに消化吸収が促進されます。
- 発音がよくなる
- 歯並びや舌の動きが原因で発音が悪くなる、舌足らずになる場合があります。 矯正治療で発音が改善されます。
- 集中力が高まる
- 噛み合わせがよくなると、脳に刺激が伝わりやすくなります。 しっかり噛むことで脳は活性化し、情緒の安定や集中力のアップが期待できます。 勉強やスポーツなど何事にも集中して取り組む力が身につきやすくなります。
- 生涯の医療費の削減
- 歯並びを整えることで、虫歯や歯周病になりにくくなるだけではなく全身の疾患も少なくすることができます。 一生涯にかかる医療費を減らす効果も期待できます。
なぜ歯並びが悪くなるのか
歯並びが悪くなる原因は生まれつきのものと悪い癖によるものがあります。
生まれつきの場合は、顎の手術が必要になることもあります。
一方、歯並びに悪い癖は、以下のようなものがあります。
- 指しゃぶり
- うつぶせ寝
- 片側の歯だけで噛む
- 頬杖
- 口呼吸
これらは悪い歯並びの原因となります。 矯正が終わったあとも悪い癖は歯科医師の指導と、本人の意識によって改善することが必要です。
小児矯正のメリット・デメリット
小児矯正では、顎や歯の成長に合わせて歯を正しい位置へ移動させていきます。
このため、抜歯せずに治療できる可能性が高いといえます。
治療はお子さまの歯の状態に合わせて、適切な矯正装置を組み合わせて進めます。
小児矯正にはメリットとデメリットがあります。
- メリット
- ・歯を抜かずに治療できる
- ・大人になってからよりも歯並びが美しくなりやすい
- ・思春期をきれいな歯並びで迎えられる
- ・虫歯予防
- ・成人矯正よりコストが安い
- デメリット
- ・顎の成長に合わせるため、一時的に歯並びが悪化する場合がある
- ・治療を嫌がる場合が多い
- ・磨き残しが出ることが多く、虫歯になりやすい
治療の時期
小児矯正では治療時期を2つに分けます。
- 骨格矯正期
- 正しい歯並びや噛み合わせのためにまずは骨格を整えます。
歯が正しい位置に生えてくるようスペースを確保します。 成長期の子供だからこそできる治療です。
3〜12歳が対象年齢です。
6歳前後に乳歯の奥から「6歳臼歯」という歯の王様が生えてきます。 6歳臼歯を基準にして、正しい噛み合わせを作っていきます。 出っ歯や受け口の予防もできます。
- 歯列矯正期
- 骨格矯正によって、顎の骨の大きさやバランスが整えられることで、永久歯がきれいに生えそろい、その後の治療が必要ない場合もあります。
骨格矯正で歯並びが十分に整わなかったとしても、歯全体の矯正を行うことはほとんどなく、部分的な矯正で済みます。 場合によっては永久歯が生えそろって顎の成長が止まった段階で治療したほうがよいケースもあります。
使用する装置
小児矯正で使う装置は、取り外しできる可撤式と、取り外しできない固定式の2種類があります。
お子さまの年齢や症状に合わせ、最適な装置を選択します。
【可撤式装置】
- 床矯正
- 顎を広げて、歯並びが整うスペースを作るための装置です。
1週間に1回程度通院していただき、ネジを調整して装置を広げ、歯列の幅を広げていきます。
- 機能的矯正
- 出っ歯を矯正する装置です。
外出中は装着せずに、基本的に学校から帰宅したら翌朝の登校前まで装着します。
休日など外出をしないときは、自宅にいる間はずっと装着しておくことを推奨しています。
【固定式装置】
- マルチブラケット
- 歯1本1本にブラケットをつけて、歯並びを整えていきます。
歯列矯正期で使います。
永久歯の前歯だけ、または奥歯だけなど、部分的につける場合が多いです。
- 急速拡大装置
- 上顎の歯幅を広げて、歯並びを整える装置です。
装置のネジを回して900gから1500gの強い力をかけて歯列の幅を広げていきます。
マルチブラケット装置よりも早く歯が移動し短期間で効果が得られますが、ストレスもそれに伴い多くなります。
マウスピース型矯正装置の最高峰インビザライン
インビザラインはコンピュータを使って作製された透明なマウスピースを、1週間ごとにつけ替えて歯に力を加え、歯を動かしていく方法です。
マウスピースは患者様一人ひとりにあわせてカスタムオーダーで製造されます。
薄く透明なマウスピースなので、装着しても目立ちません。
食事や歯磨きの時は取り外すことができます。
インビザラインのメリット
インビザラインのメリットは、透明なマウスピースが自由に取り外し可能なことです。
このマウスピースのことをアライナーと言います。
装着したまま他人と会話をしても、違和感はなく、周囲に気づかれることはほとんどありません。
必要に応じて簡単に取り外すことができることもメリットです。
歯ブラシやデンタルフロスなどの歯のケアもしやすいので、口の中を清潔に保つことができます。
自分では取り外すことのできないワイヤー矯正に比べ、快適で衛生的に矯正治療を進められます。
コンピュータを使って作成
インビザラインは、立体画像で過程をシミュレーションしながら進めます。
アライナーの作成にあたっては、患者様一人ひとりの歯の状態に基づいて歯並びをシミュレーションします。
その結果に基づいてアライナーを作っていきます。
約1週間ごとにアライナーを交換しながら歯に装着し、歯を0.25㎜ずつ動かしていきます。
成人矯正
子供の矯正は親が歯科につれていき相談するものですが、大人になってからはご自身で矯正をするかどうかを決めることができます。
歯並びの乱れは目立ちますし、相手の印象も左右します。
歯科矯正は大人になってから十分に可能です。
歯並びにお悩みの方は、矯正歯科治療で歯並びを美しく整えましょう。
いつからでも矯正歯科治療は可能
矯正治療は子供のうちにやるイメージが強いですが、大人になってからでも矯正治療は可能です。
大人も子供も矯正装置を歯に装着して、歯を正しい位置に動かすという方法は変わりません。
大人になってからでも歯並びに整えることは可能です。
成人矯正は、矯正装置をしたまま仕事をする必要があるのがネックですが、近年の治療技術や装置の進化によって、非常に目立たない矯正装置が開発されています。
透明な矯正装置や歯の裏側に装着する矯正装置などもあり、自分に合った方法をお選びいただくことができます。
成人矯正のメリットとデメリット
大人になってから行う歯科矯正は自分の意志で始めます。
歯並びや噛み合わせを整えるため、自分で時間とお金を投資するのです。
「時間や金をかけるからにはきれいに治したい」という気持ちで真摯に取り組むので、治療がスムーズに進みやすいというメリットがあります。
一方で成人矯正は、顎の骨格を変えることはできません。
このため、歯を正しい位置に動かす空間をつくるため、抜歯が必要な場合もあります。
また子供よりも完治までに長期化しやすいです。
骨格や歯並びが固定された大人の矯正には制約はありますが、不可能ではありません。
歯並びや噛み合わせに悩みを抱えている方は、当院に気軽にお問い合せください。
大人と子供の歯科矯正の違い
歯科矯正は、大人と子供で治療方法が大きく異なります。
大人は顎の骨の成長がなく固定されているので、矯正器具で顎の骨を動かして歯を移動させるスペースを作ることはできません。
そのため、健康な歯を抜いてスペースを確保する場合が多くなります。
一方、子供は、顎が成長するタイミングを利用して顎の骨を広げながら矯正を行っていきます。
歯を動かすスペースを自然に作れるのです。
また、骨の成長が止まり、骨格が固定されている大人のほうが歯が動きにくいので子供の矯正より時間がかかります。
矯正装置の種類
金属ブラケット
歯の表面に金属製の矯正装置(ブラケット)を取り付け、ブラケットの穴に金属製ワイヤーを通して、歯を正しい位置に動かしていきます。 矯正ときくとこの目立つ金属ブラケットをイメージする方が多いのではないでしょうか。 矯正装置が目立ちますが、薄くて丈夫で使いやすいので、他の矯正装置よりも安く抑えられます。
- メリット
- ・比較的安価
- ・様々な症例の治療に使用できる
- デメリット
- ・装置が目立つ
- ・金属アレルギーだとつけれない
- ・装着時に違和感がある(なれるまで数日)
- ・口内炎になる場合あり
セラミックブラケット
セラミック製のブラケットは歯に近い色なので、金属ブラケットよりも目立ちません。 ワイヤーを通して歯を動かす仕組みは同じです。
- メリット
- ・金属よりは目立たない
- デメリット
- ・金属ブラケットに比べると高い
リンガルブラケット
歯の裏側に装着する矯正装置です。 外から非常に見えにくいので、周囲の目を気にせずに歯科矯正ができます。
- メリット
- ・目立たない
- ・歯の表面を傷つけない
- ・装着したまま吹奏楽器を演奏できる
- デメリット
- ・高額
- ・装着から2~4週間は発音がしにくい
- ・異物感を覚えることがある
- ・扱っている矯正歯科医院が少ない
マウスピース型矯正装置
透明なマウスピースを歯に装着して歯を動かします。 目立ちにくいうえ、食事中などは取り外しができます。
- メリット
- ・ブラケットにある不快感が非常に少ない
- ・痛みがほぼない
- ・透明で薄いマウスピースなので、周囲に気づかれない
- ・取り外して食事や歯ブラシができる
- デメリット
- ・毎日自分で装着する必要がある
- ・難症例では対応できない
- ・費用が比較的高額