失った歯をそのままにしている危険性
虫歯や歯周病、けがなどによって歯を失った場合、人工の歯を入れて歯の機能を補います。これを、ただの見た目の問題や抜けた歯の埋め合わせと軽く考えている方もいらっしゃいます。中には「特に気にならないからそのままでいいや」と放置されている方もいるようです。
しかし、それは歯だけでなく、体全体の健康にかかわる大きな問題です。なぜなら、歯が抜けて空いたスペースできてしまうと、隣接する健康な歯が、スペースを埋めようと動いてしまうのです。
例えば、上の歯が抜けたのに放置したとします。すると、噛み合う下の歯は少しずつ上に向かって移動しはじめ、左右の歯も空いたスペースに向かって倒れはじめます。そうやって、1本の失われることによって歯並び全体が崩れてしまい、口の中全体がバランスを欠いた不健康な状態になってしまいます。
影響は口の中だけに治まりません。噛み合わせが悪くなり、食べ物が噛みにくくなってしまって、十分な咀嚼ができなくなります。咀嚼ができなくなると、食事もおいしくなくなり、食べ物の消化も悪くなって、胃腸に負担がかかります。このように、1本を歯を失うことで、体全体が影響を受けるのです。
歯を失ったときは、放置せず、しっかりと治療しましょう。
当院の院長は昭和大学高齢者歯科に12年在籍した入れ歯の専門家で、日本義歯ケア学会義歯ケアマイスターです。入れ歯を検討されている方や、お悩みの点がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
入れ歯の種類や構造の違いとは
入れ歯には、どのような種類があるのでしょうか。入れ歯の種類や構造の違いなどについて説明します。 入れ歯は大きく分けて「部分入れ歯」と「総入れ歯」の2つに分けられます。全ての歯を補う入れ歯のことを総入れ歯と言い、1本でも本人の歯が残っていると部分入れ歯と言います。
部分入れ歯
部分的に失われた歯を補うものです。通常は、人工歯が付いた義歯床(しょう)を、歯を失った部分の粘膜に乗せ、残った歯にバネをかけて固定します。ブリッジと同様、健康な歯にバネをかけますが、ブリッジに比べて歯を削る量が少なく、健康な歯へのダメージも小さくなります。
失われた歯が1本でも、逆に1本しか残っていない場合でも「部分入れ歯」といいます。また、バネを用いず固定する方法もあります。
総入れ歯
総入れ歯は、すべての歯を失った方のための入れ歯です。
安定感が不足し、噛む力も弱いというイメージがありますが、患者様それぞれの口の中の状態に合わせた治療を行うことにより、安定感や噛む力をアップさせることができます。
入れ歯の構造について
通常、部分入れ歯を固定するには「クラスプ」という装置が使います。
ほかには、マグネットで固定するものや金属バネを使わない方式のものもあります。
総入れ歯では、顎の粘膜の状態が良くないと安定しないので、シリコンなどを用いることによって安定感を増し、従来に比べて噛み心地をよくしたものもあります。
入れ歯を使うメリットとデメリット
歯を失ってしまった時の主な対処法は、入れ歯とブリッジ、インプラントがあります。
この中で、入れ歯は治療期間が短期間で済む方法です。
入れ歯の大きなメリットは、数本の歯を失っても、一つの入れ歯で対応ができる点が挙げられれます。
保険適用外にはなりますが、インプラントオーバーデンチャーのようにほとんど目立たない入れ歯もあります。
ブリッジやインプラントのように顎の骨や歯に固定するタイプではないので、修理や調整がしやすい点も大きなメリットです。
一方で入れ歯のデメリットは下記の点が挙げられます。
- 食べかすが挟まりやすい
- 硬い食べ物が食べにくい
- 基本的に見た目が良くない
- 手入れが手間
取り外しができるのはメリットですが、隙間にものが挟まりやすいです。
口の中には髪の毛1本入っただけでも異物感を覚えます。
また硬いものを食べにくいです。
保険が適用される歯科用プラスチック製の入れ歯は熱を感じにくいので、料理の味わいにくいと言われます。
自費診療であれば、良い入れ歯の種類を選ぶことができ、熱さがもしっかり伝わる良い入れ歯なら、料理もおいしく味わうことができます。
保険適用の入れ歯と自費診療の入れ歯
入れ歯には健康保険を適用できるものと、全額自己負担となるものがあります。
保険適用の入れ歯は価格が安くすみますが、素材に制限があります。
一方、自己負担の入れ歯は、費用はかかりますが装着時の違和感が少なく見た目もいい素材を、希望に合わせて選ぶことができます。
違いをよく理解していただき、ご自身に合ったものをお選びください。
保険適用の入れ歯の特徴
保険が適用される入れ歯は、レジンと呼ばれる歯科用プラスチックでできています。 総入れ歯は固定する部分がないので、ピンク色の義歯床 を口の粘膜に吸着させます。 部分入れ歯には入れ歯を固定するためのクラスプという装置がついています。
- 保険適用入れ歯のメリット
- 治療費が安い
- 壊れても修理が容易。
- 保険適用入れ歯のデメリット
- 全体的に厚いため、口に装着したとき違和感を感じやすい
- プラスチックなので、食べ物の温度を感じにくい
- 部分入れ歯は金属がついているため、見た目が悪い
自費診療の入れ歯の特徴
自費診療ではさまざまな素材が使えます。主な素材を紹介します。 金属床 入れ歯の一部を薄い金属でつくった入れ歯です。 軽く耐久性があり、違和感が少ないです。 ゴールドやコバルトクロム、チタンなどがあります。
アタッチメントタイプ
自分の歯に入れ歯を固定する装置を取り付けます。 バネは使用しません。 費用は比較的高価になります。
ノンクラスプデンチャー
金属バネを使用せずに装着できる入れ歯です。 見た目がよく違和感もあまりありません。 装着できる場合とできない場合があります。
マグネット
入れ歯に磁石が付いていて、歯根に金属の板を入れて磁気で固定する入れ歯です。
コンフォート加工義歯
入れ歯の裏側を生体用シリコンという材料で覆ったものです。 この生体用シリコンは、弾性があるため、強い吸着力があり、入れ歯を外れにくくしてくれます。
自費診療の入れ歯メリットとデメリット
金属床などの自費診療の入れ歯は、保険適用の入れ歯くらべてかなり薄くすることができ、熱も効率よく伝わるので、食事の温度を感じながら食事を楽しむことができます。
また、薄く軽いので、装着感が良いです。
保険適用のプラスチック製の入れ歯に比べて、違和感が少なく快適に装着できます。
デメリットとしては、保険適用外なのでやはり費用が高くなります。
また、バネの目立たないノンクラスプデンチャーも自費診療ですが、目立たないというメリットの代わりに、普通のバネの入れ歯よりも噛む力が弱くなるというデメリットがあります。どの入れ歯にもメリットとデメリットがありますので、金額だけでなく、自分のライフスタイルとあわせて、どの入れ歯がふさわしいのかを考えて、選択しましょう。